おはんこ日記

映画の感想など

3月に読んだ本。

沢山読みたいと思っていたけど、読んだのは3冊というか、3冊弱(1つは雑誌に載った1作品なので)

 

まずは1つ目。

 

文藝 2022年春季号に掲載された宇佐見りん「くるまの娘」

芥川賞受賞後第一作。
まだ「推し、燃ゆ」読んでいない。読みたいとは思っている。
この作家の作品は初めて読んだ。

高校生の女の子とその家族の話だけど、厳しい、辛い、逃げられない苦しさ、でも、決してそれだけではない、家族への溢れる愛情もある、という複雑な心情が描かれている。

父親はDVとモラハラをする男。
一応主人公の扱いが一番マシ(愛玩子というほどではないが)で、もっと扱いが悪かった兄や弟は家を出ている。でも、そのせいで父親の生い立ちに同情してしまったりして、家から逃げられなくなっている、とも言える。
母親は脳梗塞の後遺症のためか精神的に不安定で、手が付けられなくなることがある。

読んでいて辛くなるシーンもあるが、両親はただの毒親として描かれているわけではない。
簡単に割り切れない、家族への愛憎を描いているという点でなかなか面白い作品だった。

 

2冊目。

マルクス思想の核心」鈴木直

病院での待ち時間にテレビを見ていると、NHKの名著で100分の資本論がテーマの回をやっていて、面白かった。
「人新世の『資本論』」が読みたくなったけど、図書館では150人待ちだったので…
他のマルクスについて書かれた本を読んでみようと思った。

共産主義が良いとかではなくて、資本主義がもつ問題点について書かれたのが「資本論」やマルクスの他の著作だと思う。

マルクスは経済学者であるとともに哲学者でもあったんだな。
フォイエルバッハマルクスの思想の違いを知れたのが良かった。
というか、ずっとフォイエルバッハのことが気になっていたんだけど(笙野頼子の小説とか読んでいると、よくフォイエルバッハの「キリスト教の本質」の話が出てくるので)簡単にどういう思想なのか分かって良かった。
フォイエルバッハ無神論…人が神に見るものは人が理想とする人のあり方…人自身であったんだな。
マルクスはまたちょっと違う考えだったようで…
フォイエルバッハは人間の本質を個人に見ていたが、マルクスは人間の本質を社会に見ていた。

フォイエルバッハについて書かれたのはほんの一部分で…マルクスの思想を知ることのできる1冊。
私にとっては結構難しい本だったけど、面白かった。

 

 

3つ目。

「進学のよろこび」アリスター・E・マクグラス

佐藤優の「神学の履歴書」で紹介されていた…と思う。

もともと私は宗教に興味を持っていた。
最初に興味を持ったのは少なくとも小学校低学年の頃…

その頃から物語を見てもなぜか悪役に感情移入してしまう自分がいて…当たり前だが、最後は死んだり不幸になることが多いのが辛かった。
例えばかちかち山のタヌキのような、人を殺したような悪いヤツが救われるにはどうすれば良いのだろう?と子供ながらに考えた。
その結果、親または神様に許してもらうしかないな、と思った。

その後、大きくなってからは、親よりも断然神様の方が頼りになるよな…と思い、宗教に興味を持つようになったのだった。

この本を読むと、地位のある大人が何千年も、神について、救いについて、真剣に考え、議論し、体系づけていったことが分かる。
もちろん教会は権威でもあったから、その権威を保つための実際的な理由もあったんだろうけど…
でも、直接的に何か役に立つわけでもない、神様のことを深く真剣に考えた人がこれだけいることに…なんか感動してしまう。

私自身は教会に行ったりはしていないんだけど、人間の…というか自分の弱さを感じることは数え切れず…
人間よりも大きなものを信じることで、よりよく生きることができるような気がする。
上で無神論者のフォイエルバッハとかマルクスの話をしていて何だけど…神様がいるかいないのかとかは絶対に人間が分かることはない。でも、いて欲しい、という思いを抱くのも人間だと思う。

 

 

そんな感じで、3冊弱読んだ3月だった。

4月も3冊は読みたい。