ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットの真面目さに心打たれた。
Blu-rayでは2枚組になっていて、合計4時間超というボリュームのある作品となっている。
劇場版に加えられたシーンだけでなく、削られたシーンもあり、同じ作品とはいえかなり違った印象を残す作品となっている。
劇場版を見た感想
目次
見て良かった理由:真面目に困難と希望が描かれていていた
見て良かった理由としては、とにかく丁寧で真摯に作られた映画だった。
アメコミを神話として作り上げ、ヒーローたちの苦闘を描き、現代人の希望の物語として描こうとする真面目さを感じたからだ。
①6人のメンバーの描写が丁寧
劇場版ではコミカルなシーンがいくつかあった。明るく楽しい雰囲気を出そうとしていたのだろう。
しかし、スナイダーカットではそういうシーンはカットされ、ほとんど出てこない。
それでは見ていて楽しくないのでは…となりそうだが、そうならない。
6人のキャラクターの背負うものを丁寧に時間をかけて描いているので、引き込まれる。
6人ともそれぞれの孤独を抱えていて、それでも世界を守るために力を合わせようというのが伝わり、崇高さを感じる。
特にサイボーグは丁寧にバックグラウンドが描かれていた。
父への複雑な気持ちや変わってしまった自分の肉体に対する悩みといったものを乗り越え、その後の悲劇すらも乗り越えてヒーローになろうとする、主人公らしいキャラクターだった。
そんなサイボーグを見守るほかのメンバー…特にバットマンやワンダーウーマンは大人らしく支えていて、頼もしかった。
劇場版とはかなり雰囲気は違うが、丁寧な描写で無理のない流れでメンバーが描かれていて消化不良になることがなかった。
②敵であるステッペンウルフが見た目強くて、人間味(?)もある
劇場版を見たときは全然良いと思わなかったステッペンウルフ。
ヴィラン好きとしてはヴィランがつまらないと作品の魅力が半減するように思う。
そんなステッペンウルフがスナイダーカットの方では魅力が何倍にも増していたのに驚いた。
ちょっとしたさじ加減で魅力ないヴィランも輝けるんだな。
まず黄金の鎧みたいな衣装が強そうに見える。
ヴィランがショボいのはあかん。なめられんようにせんと。
黄金の鎧、ファサファサ揺れているのが可愛いっていうのもある。
単独でヴィランだった劇場版とは違って、スナイダーカットでは下っ端に過ぎないというのもポイント。ダークサイドという大ボスがいる。
しかも、ステッペンさんは全く期待も信用もされていない、酷い扱いを受けている。理由は不明だが…
それでも頑張るステッペンさんを見ているとなんだか同情してしまう。どこの世界も大変だね…って声を掛けたくなる。
絶命の仕方も少し違う。それも、ステッペンさんのヴィランとしての品格を保てたと思う。
下っ端とはいえ今作ではメインヴィランであるステッペンさんがザコ敵みたいな死に方したら締まらない。
ザック・スナイダーはヴィランの描き方にも品があると思う。
③「人体の美しさ」を感じさせる
映像特典のザック・スナイダーのインタビューを見たら、駆け出し時代の話の中で「human figureに興味があった」というようなことを言っている。
劇場版と比較はできないけど、確かに今作でもhuman figure…人体の形の美しさみたいなのを感じさせる。
神話のようにアメコミを組み立てて、人間の体であるはずのものが神のもののように見える。
明るさを消して、統一されたトーンで描かれているので、闘う人体が引き立つ。
衣装が良いってのもある。
私も人体が好きなので、人体の形の美しさを見せてくれる今作には魅入られるシーンがいくつもあった。
満足だけど、見た後には切なさが残る
本当に満足できたのだけど、見たら何とも言えない切なさが残った。
本来の予定通りにいかなかった作品だから…
①続きがあることを示して終わる
ザック・スナイダーカットは続編が出ることを前提とした作りになっている。
ラスト周辺はバットマンとジョーカーがなぜか手を組んでいる設定になっていたり、ロイスが死んでいたり等、分かりにくいことになっている。
そういったことも続編で描かれたのだろうが、もう作られないだろうから切ない。
せっかく世界の危機を守ったはずなのに、不穏さしかない終わり方になっている。
➁映画って難しい…
このザック・スナイダーカットは素晴らしい出来だったけど、結局劇場公開できなかった。
たとえ交代がなくてもこのまま劇場公開はできていなかっただろうと思う…
4時間は長いし、この真面目な(真面目過ぎて陰気にも見える)作風が好きな人がどれくらいいるのかもわからない。
せっかくヒーローが揃っているんだし明るく痛快に敵を倒してほしい、という要望に応えたら劇場版のような改変が結局は行われていたかもしれない。
興行成績についてはともかく、スナイダーの代わりに劇場公開できる状態に仕上げたジョス・ウェドンの功績は認めないといけないだろう。
たとえスナイダーがそのまま最後まで関わり、変えずに劇場公開されたところで、興行的に成功したのかもわからない…
この素晴らしい作品がこのまま世に出て成功した世界を創造することが難しくて、勝手に切なくなってしまう。
終わりに…
映画って一期一会。
続編見たかった気持ちもあるけど、これだけのクオリティの作品をザック・スナイダーカットとして残してくれただけでも感謝しかない。
いろいろな運命が重なって残された今作が私好みだったのは奇跡だ。
真面目に、真摯に正義を描き、現代人に希望を与える神話を描き出した。
サイボーグに最後父親が残したメッセージ…ザック・スナイダー監督自身も娘を亡くした後に完成させた作品だということを考えると深いな、って思う。
もちろん、監督の気持ちなんてわからないけど、それでもこの作品を残したということにメッセージの肯定があると思う。
ヒーローは悲しみを乗り越えて、人々の思いを背負って闘い希望を与える。
そんなヒーローたちのことを忘れないようにして、私も希望を忘れずに現実を生きたいと思った。
真面目な映画だったので、最後は真面目に…
真面目真面目言っているけど、真面目でかつ面白くて見ごたえのある、最高の作品でした。