おはんこ日記

映画の感想など

今年に入って読んだ本。

2月から読み始めたこの本をやっと先日読み終えた。
バレンタインデーのチョコレートを買うために乗った電車の中で読んだのを覚えている。今はもうすっかり暑くなっている。

アルタイの片隅で

アルタイの片隅で

  • 作者:李娟
  • インターブックス
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厳しくもどこかほのぼのとした雰囲気のある、中国の最北・最奥部に位置する地域に住んでいた人のエッセイ集。

自然も生活も厳しそうなのに、美しい自然の描写に惹かれる。
やっかいそうな人間もいて、いろいろあるのだろうが、人間との交流もどことなく遠慮しなくて良い雰囲気がある。

穴だらけの運動靴を履き、夏には大量の虫、冬はマイナス30度の寒さ…実際暮らしたら絶対に嫌になるだろうけど、どこか「本物の暮らし」を感じさせる暮らしに憧れてしまう。

20年くらい前の話のようなので、今はインターネットとかもあって全然違う環境なのかもしれない。
もうどこにもないのかもしれない世界の話に、私は今住んでいる場所以外にもいろいろな世界があるんだ、と思いワクワクする。

 

文章は難しくないのに、イメージすることが難しかったのもあり、ゲームやスマホに自由時間を取ってしまっていたのもあり、すごく時間のかかる読書となった。

 

今年はなかなか本が読めなかったけど、惹かれたのは『アルタイの片隅で』もそうだけど、他もノンフィクション系が多かった。

 

たとえば、『アルタイ…』よりさらに過酷な辺境で命を落とした大富豪の息子の死の真相に迫ったこの本。

実際に人喰いが行われていた地域で、その息子、マイケル・ロックフェラーは殺され、その肉を食べられたとされている

その死の真相を探るのはアメリカのライターで、その死から数十年経った現地で調査をする。

その民族…アスマットと出あい、著者はさまざまな感想を抱く。
今はもうしていないが、アスマットにとっては昔から「人を食べる」ことが民族のアイデンティティの中心にあり、伝説を大事にしている。
数十年前のロックフェラーの事件については頑なに口を閉ざしたり、ごまかしたりする。

著者は一度はアメリカに帰っていたが、再び真実を知りたいと思い、現地に戻る。アスマットと一緒に生活を共にし、信用を得ようとする。
貧しくて時代遅れなだけだと思っていたアスマットの暮らしは、彼らにとっては合理的で、価値のあるものだと言うことを知る。
やがて、著者は一定の真実性がある一つの結論に到達する。

マイケル・ロックフェラーについても、最初著者は冷淡な見方をしている。アメリカでは金で何でも思い通りになるのを、現地の人に対してもそうなると思っていたのではないか、と無謀で傲慢な若者として見ている。
しかし、最後の方ではマイケルはアスマット独自の文化に魅入られ、現地に溶け込み、ありのままの姿に触れようとした、チャレンジャーのような見方をしている。

私は妻を奪ったり、交換したり、復讐で相手の男を殺して肉を食べたり…という世界はやっぱり嫌だな、って思ってしまう。女性は物なのか、と。

十何時間も大人の男たちが一つの部屋で同じ声を上げて、一体感を高め、アスマットの民族の伝承を伝えるというのも、魅力的ではあるけど、そういうことが嫌いだったり苦手だったりする人はどうするんだろう?って思ってしまった。


人肉食が廃れたように、アスマットの生活もどんどん変わり、それでも残したいと思うものを残そうとする人がいるのだろう。
そうして、一部でもアスマット独自の文化が残っていくのだろう。

 

もう一つは、日本で私の知らない暮らしをしている人が書いた本。

もともとブログを読んでいて興味があった。
1月に読んだから記憶は朧げだけど…

私もニュータウンとされる場所をたまたま車で通りかかり、部外者ながら「不便なところにあるなー」と勝手に思ってしまうこともあるけど、著者が話題にしている限界ニュータウンはレベルが違う。住宅街という形を保つことすら放棄されている。

かつて日本ではそういう悪条件の土地でも需要があったことを著者はつきとめる。

限界ニュータウンに対する情熱がすごくて、著者は自分でも家を購入して住んでいる。
やっぱり大変な部分も多そうに見えるが、人がいないから、一軒家なのにご近所付き合いをせずに済む、という利点があるようだ。

今年に入って読んだ中から3冊選ぶとしたら、上記の3冊になる。
ノンフィクション系をこれから読んでいきたい。