おはんこ日記

映画の感想など

10月に読んだ本。

10月は3冊読んだ。

 

①『血を分けた子ども』オクテイヴィア・E・バトラー

SF短編集(エッセイもある)

表題作は、異種の生物と共生している…共生せざるを得ない社会で、男性が異生物によって卵を産み付けられて「出産」させられるという話。
悲惨さはあるけど、甘美さもある。追い詰められてはいるけど、それだけではない感情もあって…

他にも追い詰められた状況で、選択に迫られる人類について書かれた作品がいくつかある。冷徹な視線を感じる。
(あんまり言うべきではないけど、黒人女性作家でありながら名を上げてきたという立場だからこその冷たさというのもある気がする…)

②『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子

第167回芥川賞受賞作。

芦川さんという、しんどい仕事や残業などをしなくても許されている社員がいて、それに対して反感を持つ押尾さんと、芦川さんと恋愛関係にありながらも押尾さんとも親しくする二谷さん。
芦川さんは他の人と同じように仕事をしない代わりに、いろいろなお菓子を作って持って来るようになり…

今の社会を表しているということだったけど、私が今は仕事していないからか、あまり現実感を感じなかった(私の問題?)
芦川さん、お菓子作りがめちゃくちゃ本格的なので、他の人が仕事するのと同じくらいの時間掛けているんでは…とか思ってしまう。二谷さんと押尾さん以外の従業員が皆芦川さんの味方なのも結構すごい(中年が毎日お菓子食べたら体に悪いと私は思うが、皆気にしていない)

職場というのは相性だから、その職場では二谷さんや押尾さんよりも、芦川さんが持っているもの、生み出しているものの方が求められていて、それが評価されているだけなのでは…と思う。弱いからとかではなく。そもそも正社員で何年も働けているだけで十分強い人間だと思う。そこにいられないレベルで弱い人間はたくさんいる。
どんな場も、いることができる人間と、いられない人間がいる。いる人はいられるように自分の価値を示すけど、それが認められなかった人間は去って行くというだけの話。

とはいえ、押尾の言い分は分かる。でも、二谷は分からんというか分かりたくない。不誠実。

これだけ語りたくなるから良い作品なんだろうけど…芥川賞としてはどうなんだろう…軽すぎる(文体の問題ではなく)と思ってしまうけど、多くの人の共感を集めるような作品になっているから良いのかな。
(私は正直、芥川賞は「共感なんかいらないぜ!」みたいな作品が受賞して欲しいけど、そんな作品は売れないだろうし…)

 

③『人新世の資本論』斎藤幸平

 

ずっと読みたかった本。

この本で焦点を当てられているのは環境問題(気候変動)。
マルクスって昔の人のイメージなのに、当時から環境問題に関心を寄せていたのが意外。
気候変動についてもそうだし、結論として書かれている「脱成長」も、そういえばニュースでよく見たり聞いたりするぞ、と思う。
読了後すぐ、新聞で宮古島のワーカーズコープの記事を見たし……(この本では資本主義で成長を追い求める会社に対して、「脱成長」を叶える方法としてのワーカーズコープが例として出されている)
今の時代の流れがこの本に書かれているんだなぁ、と思う。

最後の著者の主張がアツくて、簡単なことではないと思うけど、少しずつ今の社会が変わっていけたら良いな、と思った。

 

10月も3冊読めて良かった。