おはんこ日記

映画の感想など

5月に読んだ本。

5月も3冊読んだ。

なぜか素直に本の内容を素直に受け取れず、ひねくれた感想ばかり出てきてしまった。
いつもそうなのかもしれないが、5月は特に酷かった。


ひねくれたことばっかり書いているから、不快にさせるかもしれません。

 

①「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

主人公のカイアが湿地地帯で一人で生き抜く話。完全に一人で生きているわけではないけど、家族には去られて一人暮らししながらお金を稼いで生活している。

もともとは両親や兄弟と暮らしていたんだけど、母が去り、兄弟が去り…最後には暴力を奮い他の家族が去る原因となっていた父親までも去って行ってしまった。
それでも、一人で生き抜いていく。

自然の中で暮らしているのもあり、生き物の知識もすごい。知識欲が旺盛で、知能も高い。
ある男の子に勉強を教えてもらうだけで、字も読めなかった主人公は自分で学びだし、最終的には本を書く。それが売れる。

一人で自然の中に取り残されたとしても、カイアのように生きられる人はそうはいないだろう。スーパーウーマンやなって思う。
ただの女の子ではなくスーパーウーマンの話だからこそベストセラーになったんだろうけど…

それに、幼少期からほとんど外部と交流していなかった割には、カイアはそれなりに人と交流ができている。
同世代の男の子2人とは恋人のような関係になるし、売店の店主ジャンピンとその妻との交流もある。

カイアはもちろん他の女性とは違う部分もあるけど、人を不快にさせる振る舞いをするわけではない。
服装も他の女性のように着飾っているわけではないが、不潔と言うわけではない。

…長々と何が言いたいのかというと、カイアと違って両親にきちんと育てられ教育も受け人との交流もさせてもらえていたのに、それでも社会で適切に人と交流できないような気がしている私の情けなさを感じてしまったということだ。
社会で上手く人と交流できていない上に、カイアのように豊富な知識もないし優れた能力もないという…切ない。

ひねくれ目線や嫉妬が湧き出てしまって、辛い読書だった。
しかし、私のような人間が辛くなるこの作品がベストセラーになるのは分かる。
私もこの作品を楽しめる人間になりたかったが…

サバイバル要素、自然の豊かさの伝わる描写、誰がチェイスを殺したのかというミステリー要素、という盛り沢山な内容なので、私のようなひねくれ人間でない人が読んだら面白いと思う。

 

②「批評の教室」北村紗衣

ブログで映画や本の感想を書いているし、批評について学びたいと思って読んだ。

批評のやり方が一通り書かれている。読みやすい。批評をしてみたい人にはおすすめ。

…それで終わらせれば良いんだけど、私はやっぱり嫉妬のような感情が湧き出てしまって、素直に読めない部分があった。
著者の北村氏はフェミニズム批評というものをしているようだ。学者、批評家として第一線で活躍する女性である北村氏はフェミニズムと親和性が高いだろうから良いなーと思ってしまった。
私もフェミニズムには興味があって本も読んでいたけど…フェミニズムの正しさを感じると同時に経済的に夫に依存している私の生き方の正しくなさを感じてしまうから、ここ数年フェミニズムと名の付く本を読むのが辛くなってしまった。
フェミニズムの名の付く本のすべてが私のような生き方を否定しているわけではないのは分かっているが、ふいに刺さる言葉に出会いがちなので避けてしまう…)

北村氏のような人はフェミニズムについて知れば知るほど自身の生き方の正しさを確認できるだろうな…と羨ましく思ってしまった。
そんなことはないのだろうし、私にはない苦労もあるのだろうけど、そう思ってしまった…自分が情けない。

 

③「ここはとても速い川」井戸川射子

野間文芸新人賞を受賞した作品ということで読んだ。
表題作ともう1作が収録されている。

著者の井戸川氏は詩人でもあるようで、中原中也賞を受賞している。
詩人らしく、一つ一つの文章におっと思わせるような表現がある。
全体としては普通…詩として言葉が美しいのと、小説として言葉が美しいのは違うのかなと思う(全体としてラストまでの盛り上がりが欲しかった)
社会学部出身らしく(?)社会に対する問題意識のようなものがあり、そこは良いと思う。

表題作は関西弁で書かれていて、私のような人間は親しみがわく。逆に言うと関西と関りのない人は読みにくいかもしれない。児童養護施設に暮らす男の子の話。
もう一つの作品はアドレスホッパーの話で、住所のない生き方をしている女性の話で、同じように住所のない生き方をしている親子も出てきて、特に子供が辛い。
そういう深刻なところのある作品だったけど、アドレスホッパーという言葉になじみがなかった私はその字面を見るたびにアクセルホッパーを思い出してしまい、パッパンスパパンと陽気な気分になってしまった。

2作品とも終盤で主人公の思いが溢れ出すという展開がある。
純文学ってそういう展開がある作品多いよな、と思った。

 

まとめ

…というわけで、大体ひねくれて碌な感想を抱かなかった5月だった。
私のメンタル的なものの問題(と元々の人格の悪さの問題)もあったけど、予約していた本の順番が回ってきた本ばかりになってしまったのもある。

人気のある作品を無料で読めるのだから、図書館にはありがたいという気持ちしかないが、自分の読みたいタイミングで読めないから疲れてしまったのかもしれない。

 

6月はマイペースに…と言いたいところだが、もう2冊予約していた本の順番が回っているから読む。
自分のメンタルをコントロールして、ひねくれていない素直な感想を抱けるようにしたい。